秀品出荷のための栽培技術
トウモロコシの原産地はメキシコ南部などの中南米と言われており基本的に高温・乾燥条件を好む作物のため、播種時期によっては十分な発芽条件が確保されず発芽不良を招くおそれがあります。
播種時のポイントをしっかりと押さえて播種に臨みましょう。
-
発芽温度
発芽適温(地温)は25~30℃となっていますが、特に15℃を下回ると極端に発芽やそろいが低下することがあるので、春先などの低温時期は早めにマルチ、トンネルなどの圃場準備を進め、播種日までに十分な地温を確保してください。
-
複粒数まき推奨
播種は1穴あたりに複数粒まきを推奨します。複数粒まきすることにより発芽後~初期生育時の勢いが出やすくなります。
また、生育をそろえるように間引くことで、作業性や収量性の向上が期待できます。 -
水分過多に注意
発芽には水分が必要ですが、過剰な土壌水分は発芽不良の原因となります。排水性の悪い圃場では高畝にする、または排水路を設けるなどの対策が重要です。
また、播種穴の深さは2~3cmが基準となりますが水分が多いときはやや浅め、乾き気味のときはやや深めに調整するとよいでしょう。 -
播種時の天候に注意
播種前後の雨は地温低下による発芽不良や立枯病などの原因になることがあります。天気予報を確認の上、播種日を計画しましょう。
-
移植栽培の注意点
トウモロコシは直根性の作物なので移植を好みません。本来は直まき栽培が最も適していますが、近年移植栽培を行う方もいます。
移植栽培を行う場合は、移植後スムーズに根付かせるような管理を心がけてください。1.若苗定植の徹底
根鉢をつくるとストレスがかかり、収量に影響が出ることがあるため、本葉2〜3枚以内の若苗定植とする。老化苗定植は草勢不足につながるので注意。
2.苗の馴化
育苗床から圃場へいきなり定植すると苗が傷みやすくなる。定植前1週間程度を目安に日中の暖かい時間は苗を徐々に外気温にならすようにする。
3.育苗時の週灌水に注意
水稲育苗箱などを使用する場合過湿状態になりやすいため注意する。
4.定植時の灌水
育苗土と圃場土をなじませ、根付かせやすくする。
-
根張りのよい樹をつくる
しなびは収穫遅れが一番の原因ですが、根張りが悪かったり、上根になったり、倒伏したりすることもしなびを助長します。
水田や水はけの悪い畑では、排水対策(高畝、排水路など)で過湿状態にならないようにし、旺盛で健全な根張りを促すことが重要です。
根張りをよくすることで生育が旺盛になり、耐倒伏性が増し、しなび果も軽減させることができます。▲樹はがっちりと
-
早い作型での注意点
ハウス栽培やトンネル栽培のような作型(早出し)では、高温気味に管理することによる軟弱徒長を避けます。軟弱徒長は減収につながるので、要注意です。
-
施肥の設計について
早い作型については、元肥:追肥=2:1
マルチや露地作型については、元肥:追肥=1:1とします。
追肥のタイミングは、1回目が間引き時期、2回目は雄花が出穂(しゅっすい)を始める直前の時期とします。特に早生品種は、中早生品種よりも生殖生長に移行するのが早いので、元肥を重視した施肥設計として、草勢の充実に努めましょう。肥料が切れたらどうなるか
肥料が切れるとともに、下葉から黄化していきます。さらにそのまま放置しておくと黄化部から枯れ始めます。
肥料が足りないのか、肥料が効かないのか
追肥後に圃場が極端に乾燥している場合、その肥料が効かないこともあります。必要に応じ、追肥後に灌水を行うとよいでしょう。
追肥の最終タイミングについて
即効性の肥料といっても、1番穂に効果が現れるのは雄花の出穂期くらいまで。それ以降の追肥は施肥量ほどの効果が現れないので注意が必要です。追肥が必要であれば「ALA-FeSTA」などの液肥を使用するとよいでしょう。
-
適期収穫までの流れ
ステップ1
圃場ごとに、どの品種をつくっているか必ず記録する。
登熟の早い品種は収穫時の労力も考えて段まきする。ステップ2
絹糸が出始めの日付を裁培日誌などに記録する。
平均気温と登熟に要する積算温度(下記参照)を基に、収穫予想日を決めておく。
収穫予想日の3日程度前に試しどりする。ステップ3
試しどりし、適期までどれ<らいか判断する。(実際に食べてみるとよくわかる)
品種によって適期の穂姿も異なるので注意する。
絹糸抽出から収穫までの積算温度の目安
-
ゴールドラッシュ
ゴールドラッシュネオ
450〜460℃ -
ゴールドラッシュ86
520℃ -
ゴールドラッシュ88
ゴールドラッシュ90
500℃
穂サイズが出ていないからといって収穫を待ってはダメ
砂地では通常より登熟が早まるので、より早めに調査する
《積算温度について》1日の最高気温•最低気温をたして2で割った数値が1日のおおよその平均気温となります。これを毎日たしていった数値が積算温度となります。たとえば、1日の平均気温が23℃であった場合、絹糸抽出日よりおおよそ19~20日後(積算温度450~460℃)が、「ゴールドラッシュ」の収穫適期となりますが、例えば23℃より高い日が数日続いた場合は、それよりも早い時期に適期を迎えることとなります。