近年は大雨や突風、高温といった異常気象に見舞われることが多く、作柄を安定させることが難しい状況が続いています。また、現在のスイートコーンの市場流通は極良質黄色品種が中心となっており、やわらかい食味が特徴であるため粒皮が薄く、近年の収穫期の高温化により、収穫後の粒皮のしなびが早い傾向があります。苞葉の一部を剥ぎ、中の実を見せて陳列するような販売形態も増える中、品質保持は今後ますます重要な課題となります。
このような状況に対応するため、タキイでは「キャンベラ」シリーズの見直しを進め、このたび「キャンベラ90EX」を育成いたしました。露地栽培での育成が安定し、耐しなび性や安定した穂形状を備え、抑制栽培にも対応できる中生の品種です。
●しっかりとした株で安定した栽培性
根張りが頑健で、株をしっかりと作ってから穂をつける特性があります。草丈は200cmほどになりますが、根張りが強いため倒伏に強く、がっしりとした草姿になります。熟期は中生で一般地のマルチ栽培では、播種後約90日が収穫の目安となります。
●抑制栽培でも安定出荷
秋の行楽シーズンは需要が高まります。この時期の出荷を狙う場合は、最も暑い時期での播種になるため、高温下でも生長が一定のスピードで早まりすぎず、充実した株になることが重要です。この作型では、初期生育がじっくりで株がしっかりと育つ「キャンベラ90EX」が最適です。
●しなびに強い
粒皮がしっかりとしているため、高温期の収穫でも粒皮のしなびが少なく、棚もちに優れます。
●秀品率
穂形が安定して苞葉のかぶりがよく、粒列の乱れや先端不稔の発生が少ない秀品率の高い品種です。
甘みが強く食味も良好で、従来の「キャンベラ90」より苞付重で10g、穂長で1cmほど大きくなり、穂のボリュームも改良されました。
●適作型
熟期が遅い中生種で、気温の高い作型にて栽培が安定しますので早出し用のハウス、トンネル栽培よりも、4月中旬~5月中旬播種の一般露地マルチ栽培が適します。従来の品種ですと、中間地の収穫・出荷は7月いっぱいですが、この品種は高温下でもじっくりと生育し、穂の肥大も安定しますので、8月上中旬収穫(5月中旬播種)まで作型を広げることができます。
抑制栽培では、7月中下旬~8月上旬に播種し、10月中下旬に収穫します。下降気温下での栽培では積算温度の確保が難しく、霜の恐れもあるので、特に冷涼地では播種の遅延に中位してください。
●施肥設計
苞葉のかぶりがよく、穂先まで粒が入った大きな穂を収穫するためには、出穂期までにしっかりとした株を作ることがポイントとなります。「キャンベラ90EX」の強勢株と根張りを促すため、元肥は堆肥を多めとし、チッソ、リン酸、カリの成分量で10㎡当たりそれぞれ2500gを施します。
●適期の追肥を心掛ける
1回目は本葉6~8枚ごろ、2回目は雄穂が見え始めたころに行い、10㎡当たり、チッソ成分量で50gの速効性肥料を施します。
株できがよく、がっしりとした草姿ですが、追肥が遅れると、穂が十分肥大できないため、適期を順守して施肥を行ってください。
●潅水管理
生育初期の本葉6枚目までは乾燥と過湿に注意し適湿を保ちます。1回目の追肥(本葉6~8枚)以降は生育が急速に進み、水分を特に多く必要としますので十分に潅水します。水分不足による穂の肥大不足、品質の低下、先端不稔を避けるため適切な潅水を心掛け、特に開花期から収穫期までは乾燥させないようにしてください。
●スイートコーン「キャンベラ90EX」栽培特性メモ
最適播種期 |
一般地4月中旬~5月中旬 |
---|---|
可能播種期 |
7月中下旬~8月上旬 |
基本の施肥量 |
N:P:K=25kg:25kg:25kg |
播種基準 |
畝幅150~160cm、2条まき、株間30cm(抑制32~33cm) |
栽培重要ポイント |
早まきは避ける。 |
●抑制栽培に適する品種の使い分け
焼きトウモロコシなど、加工調理に利用したい時は、粒皮がしっかりとして実崩れを起こしにくい「キャンベラ90EX」がおすすめです。加熱でさらに粒色がよくなり、新鮮さをアピールできます。
甘くてやわらかく、クリーミーな味わいと抜群の収量が魅力の「おひさまコーン88」とともに作型や流通、販売形態に応じて使い分けてください。
甘くて良質な「キャンベラ」シリーズの中生種●しっかりとした株で安定した栽培性
|