◆農薬についての考え方 | |
□農作物の生産を安定にし、高品質の物を供給するためには、病害虫による被害を防止することが必要です。このためには病害虫の発生を未然に防ぐための、耕種的な措置をとることは当然として、営利的栽培において農薬による病害虫の防除は欠かせません。 □しかし、農薬は低毒化の一途を辿ってはいるものの人畜、魚類、その他有害動植物に対し、直接的、間接的になんらかの毒性があるため、その使用に当っては、「農薬取締法」「毒物及び劇物取締法」「食品衛生法」「消防法」等の法律によって種々の規制がなされています。 □従って、農薬の使用に当っては、これらの法律を守り、細心の注意を払わなければなりません。(以上、病害虫防除基準より抜粋) □よくご存知のように、この8~9月は無登録農薬(正確には失効農薬)の話題で持ちきりでした。かつて使用していた農薬の効果に未練をもったり、「農薬もどき」に興味を持つのは、決して生産者にとって得策ではありません。今回は、すでによくご存知の農薬使用上の注意を含め、「農薬について」を基本に戻る意味で特集しました。 |
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◆農薬とは | |
●「農薬取締法」では第1条の2に以下のように規定されています。
2 前項の防除のために利用される天敵は、この法律の適用については、これを農薬とみなす。 |
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◆農薬の安全性はみんなで作るもの。高めるもの。農薬のラベルを読まない人、注意を守らない人は農薬を使う資格がありません。 | |
□このように農薬は「病虫害の治療」と「使用する人の安全性」、「作物を食べる人の安全性」の狭間で使用方法が定められています。 □しかし、ともすれば私達は「病虫害の治療」にのみ、気を奪われ、病虫害が退治でき、作物に薬害がでないかだけを考えて、防除を考えてしまうことはないでしょうか。 □たしかに、最近の農薬は毒性がどんどん低くなってきてはいます。でも、低毒化と安全性は同一ではありません。 □たとえ毒物とされる物でも、安全な使用方法が開発され、事故が起きても対策が万全であれば、その毒物の安全性は高いといえます。 □ヒトは毒物に「毒物危険」と表示し、注意を促すことで安全性を高めてきました。使用方法を詳細に決め、薬剤のラベルに表示することで安全性の向上を図っているのです。 □マスクや帽子や手袋や専用の作業衣を利用することで安全性を高めているのです。 □したがって、ラベルを読まない人や、書いてあることを守らない人には、農薬を使う資格はありません。 □まして、表示ラベルのない物を利用したり、無登録農薬とわかって使用したりするのは、問題外です。未悉の故意による殺人未遂事件です。私達は農薬の安全性の問題について、慣れをいましめ、常に細心の注意で取り扱うことを今一度確認しなければなりません。 □農作物は自らの生活の糧を稼ぐものですが、一旦、出荷されればヒトの命の糧であり、生産とは人の命を預かる崇高な行為なのですから・・・ 引用:平成14年度 病害虫防除基準、その他農薬・種苗メーカーの協力をいただきました。 |
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◆農薬Q&A | |
Q:防除する時、天気にも気をつけなければいけませんが、天気予報の用語は、微妙な表現が多く、難しいです。なにか、基準があると思うのですが・・・
A:基準があるので紹介します。
Q:散布はいつどのようにすればよい?
Q:散布が面倒なので数種類の薬剤をまぜてやりたいのですが・・・
Q:農薬の濃度は濃いほうが効果的?たとえば1000~2000倍の指示があるときは? |
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◆農薬の安全性とは | |
□農薬のヒトに対する安全性については、厚生労働省によって医薬品以上の基準で審査されています。□農薬の安全性を高めるため、急性毒性試験はもとより、多くの費用と時間をかけて各種の試験が行われています。 □現在、農薬の安全性試験にとって最も重要視されているのは、ラットを用いた慢毒/発癌併合試験です。ラットに一定量の被検物質を混ぜた餌をほぼ一生にわたる2年間食べさせ、2年後に屠殺解剖し病理所見をみる試験です。 □よく、「たとえネズミで安全性が確かめられていたとしてもヒトで安全だとは限らない。」という論議がありますが、慢毒/発癌併合試験は、最大無作用量(厳密には最大無毒性量)を求める試験で、この試験は「ラットで一生涯食べ続けても何の影響もなかった量の1/100であれば、たぶん、ヒトが摂取しても問題はないだろう」という仮定に基づいて実施されています。 □多くの場合、ラットでの慢毒/発癌併合試験の最大無作用量がADIの設定に用いられますが、イヌでの慢毒試験などでの最大無作用量がこれより低ければ、これらのうち最も小さい値が採用されます。 |
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◆劇物とは | |
□毒劇物取締法(毒物及び劇物取締法)では、 □普通物より毒性が高ければ劇物、□さらに高ければ毒物、□もっと高ければ特定毒物に分類されます。□猛毒といわれるのは特定毒物のことで、劇物は普通物のつぎに毒性が高いということです。もちろん、ここでいう毒性とは急性経口毒性、経皮毒性、吸入毒性に限られます。ちなみに、小中学校の理科室に並べられる「劇物」は「赤字」で表示してあり、「普通物」は「黒字」で表示されることになっています。□急性毒性は、生活者に被害を与えることはまずありませんが、農薬を実際に取り扱う私達に特に深刻なものです。言葉を正しく理解して、正しく取り扱う必要があります。 |
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◆これだけは絶対に守ろう!農薬安全使用のための10カ条 | |
①農薬を使う前に必ずラベル(説明書)をよく読み、特に希釈倍数、散布量、使用時期、方法をよく守ること。 (全国農薬安全指導協会企画 農薬安全適正使用ガイドブックより抜粋 |
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◆農薬残留基準の意味するもの | |
□農作物に散布された農薬は、日光や植物体の酵素による分解、蒸発、雨による流亡などにより消失しますが、その一部が収穫物中にも残留し、これを食品とともに長期摂取した場合、健康に影響を及ぼすことが懸念されます。 □しかし、残留農薬の量が一定値以下なら体内で分解、排泄されて健康を害する心配はありません。 □そこで、先にのべた動物による慢性毒性を始めとする試験および農作物における残留性に関する調査などをもとに、食品中における農薬の残留基準が定められています。 □この基準は①人体許容1日摂取量(ADI)、②農薬使用食品1日摂取量と、③正規に農薬を使用した場合の農作物中農薬残留量から安全値を乗じて求められています。 □いいかえれば、誤って農薬を使用した場合、すべての安全基準が意味の無いものになってしまうということで、次に挙げる「農薬安全使用基準」が作られています。 |
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◆農薬安全使用基準の重要性 | |
□農作物中の残留農薬の量は農薬の種類、農作物の種類、使用方法、使用時期、使用回数、散布からの収穫までの時間等によって異なってきます。 □それぞれの農薬について各作物ごとに使用量、濃度、時期、回数をかえて散布し、その収穫物について残留量を調査した結果、その残留性が食品衛生法に基づく農薬残留基準を超えないような使用の基準を定めたのが、農薬取締法による「農薬残留に関する安全使用基準」です。 □この基準の設定されていない農薬についても農薬残留調査を行い、農薬登録保留基準をもとに安全使用基準と同様に適正な農薬の使用方法がさだめられています。 □これらの使用方法は農薬ラベルにかならず表示されており、植物防疫協会の発行する『病害虫防除基準』に記載されています。 □このように、すべての農薬の安全性は、この適正な使用方法の上に成り立っています。たとえ豊かな経験がある人でも、経験上や生半可な知識で、これを超えて利用することや、適用外の作物に利用することは、人に対しても、自分にたいしても危険性が増すことを肝に命じなければなりません。 |
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◆農薬使い方の基準 | |
1、 発生前の予防に努める 2、 病害虫の正しい判断、特定をする 3、 その他 |
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協力:タキイ種苗さん
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