特徴
我が国2番目のイチゴ種子繁殖型品種で、実用利用される品種としては初になります。種子繁殖であるため、病害虫の親子間伝染を回避し、抜群の増殖率で、優れた種苗を効率よく得ることができます。
- 早生性品種で、促成栽培により、5月播種、9月定植、11月中旬収穫開始が可能です。
- 基本的には、低温短日に反応して花成形成しますが、25~27℃以下の気温条件では、24時間日長の長日条件でより花成誘導されやすいという「長日反応性」(四季成り性)を持っています。
- 鮮紅色で形の良いきれいな果実です。
- 「甘味」、「酸味」、「風味」が揃って「よつぼし」級に「美味」しい。高糖度で風味がある濃厚な食味です。また、「よつぼし」という名前には、4機関が共同で開発した期待の品種という意味も含まれています。
開発の経緯と来歴
- 新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「共同育種による種子繁殖型イチゴ品種の開発と種苗供給体系の改革」(2009ー2012)において、三重県、香川県、千葉県と九州沖縄農業研究センターが育種素材を持ち寄り、各機関の圃場を巡回し、最も優れた両親の組合せを共同で選抜しました。
- 最終的に選ばれた両親の組合せは、三重県育成の「三重母本1号」を母親に、香川県育成の「A8S4-147」を父親で、「よつぼし」は、これら両親を交配して得られるF1品種になります(図参照)。
- 農林水産業・食品産業科学技術推進事業「種子イチゴイノベーションに向けた栽培体系と種苗供給体制の確立」(2013-2015)において、育成4機関に加え、山口県、北海道、東北農業研究センターの7機関で栽培し、栽培技術マニュアルを作成しています。
- これらに加え、DNAマーカー、種苗生産技術や流通販売技術の確立について、三重大学、かずさDNA研究所、三好アグリテックとオイシックスに研究を担当していただきました。
- 「よつぼし」は、2014年1月10日に品種登録出願されました。出願番号第28844号。
品種の利用
「よつぼし」は種子繁殖型品種の実用化に向けた国内初の事例であるため、生産者に利用していただきやすいよう、利用条件が定められています。反面、違法な行為に対しては、悪い先例にならないよう厳しく対処される見込みです。
果実の生産
正当に販売されている種苗を購入すれば、許諾等受けることなく誰でも栽培できます。ただし、新しいタイプの品種で、栽培技術としてまだまだ分からないことがあるので、技術情報を共有するため種子繁殖型イチゴ研究会に入会することをお勧めします。
苗の生産
種子1粒から苗1株を生産販売するような業態では、許諾等を受ける必要がありません。ただし、顧客である生産者に正確な技術情報が伝達できるよう、苗の売りっぱなしにならないよう、指導的役割を担っていただきます。なお、苗をランナーで増やして販売することは、種苗法違反に該当します。
農家の自家増殖
生産者が自らの経営で使用する苗を、ランナーで増やして利用することは、「農家の自家増殖」として認められています。ランナーで増やした株を他人に譲渡することは、有償・無償を問わず、種苗法違反として禁止されています。余ったからタダで譲るというのでも違法になるのでご注意を。
<注意>JAや部会単位で苗を増殖して構成員に配布することがありますが、これは「農家の自家増殖」には該当しません。ランナーで増やして配布するのは違法になるのでご注意ください。
種子の生産
育成4機関から品種利用の許諾を受けなければなりません。また、種子を生産するには両親品種を利用しなければならないので、三重県から母親利用の、香川県から父親利用の許諾を受ける必要があります。さらに、果実から種子を取り出す方法は、千葉大と千葉県の特許許諾の対象になります。
栽培技術
種子繁殖であるうえ、早生性と長日反応性を併せ持つ特異な花成特性であるため、従来の品種とは異なる様々な研究が進んでいます。加えて、栽培現場での実用事例も貴重な情報になるため、種子繁殖型イチゴ研究会の活動を通じ、情報集積と共有を進めて参ります。
- 「よつぼし」の種
- 406穴セル苗
- 二次育苗のポット苗
- セル苗の本圃直接定植
- 収穫始めの株
- 「よつぼし」果実断面