緑肥作物で土づくり!景観用作物で環境美化!
近年、施設園芸地帯や野菜の指定産地などでは、連作などにより発生する病害が問題になっています。
その対策として、様々な機能性のある緑肥作物が導入され、効果を上げています。
ここでは、連作障害対策としての緑肥作物、転換畑で栽培できる緑肥作物および景観用作物などを取り上げました。
野菜作りの良作に欠かせない! 緑肥作物の効果とは?
物理性の向上
-
土壌の団粒化
生物性の向上
-
土壌微生物の多様化
土壌中の有機物が増加することでそれを分解する微生物が増えます。その結果、微生物間のバランスがとれ、土壌病害の抑制、土壌環境の改善が期待できます。
-
土壌病害、センチュウの抑制効果
-
各種センチュウ抑制効果
緑肥作物を用いたセンチュウの密度抑制の主なメカニズムは以下の3つです。
1.作物内で殺センチュウ物質をつくり、センチュウを殺す。
2.センチュウを根に侵入させるが、根内での増殖を抑える(または成長を停止させる)ためセンチュウが減る。
ネグサレタイジなど
※最近では「抵抗性打破系統」のセンチュウが出てきており、抵抗性をもつ品種でも、被害が出ることが増えています。一般的に緑肥はセンチュウなどのレースに広く対応しており、緑肥によるセンチュウ抑制は効果的です。
-
菌根菌(きんこんきん)の増加
菌根菌は根の届かない場所の養分を吸収して植物に送ってくれます。特にリンサンを吸収する力が強く、植物にもリンサンをよく供給します。植物にはこの菌根菌が共生する作物(宿主作物)と共生しない作物(非宿主作物)があります。
非宿主作物…アブラナ科作物、アカザ科作物、タデ科作物※非宿主作物を栽培する場合は、前作が宿主、非宿主作物のどちらであってもあまり影響はありません。
化学性の向上
-
肥料成分の保持力増大
全ての緑肥作物が効果をもちます。
緑肥作物が土壌中で分解されてできた腐植には、有効なチッソや微量成分が含まれています。また、腐植は土壌が肥料を保持する力を増大させます。 -
クリーニングクロップ
施設ハウス内などの土壌中の過剰塩類を吸収させ、すき込み、または搬出すると塩類集積が回避できます。
-
チッソ固定
緑肥作物を使うときのキーポイント
-
C/N比(シーエヌ比・炭素率)
土壌中の有機物の動向を考える上で重要な指標です。例えばC/N比が13 の場合、チッソが1㎏あったとすると炭素が13㎏含まれるということになります。
各種作物のC/N比(参考値)
作物 C/N比 作物 C/N比 ヘアリーベッチ 10~11 ソルガム 34~41 あかクローバー 10~16 とうもろこし 20~35 シロカラシ 12~26 とうもろこし(稈) 約45 ひまわり 13~40 稲ワラ 48~75 えん麦 15~38 モミガラ 72~80 ナギナタガヤ 約20 麦ワラ 約90 C/N比が高い(20 以上)有機物が土壌中にすき込まれると、土壌中の微生物がそれを分解するために多くのチッソを必要とします。このため、土壌はチッソ飢餓の状態におちいりやすくなります。対策として、石灰チッソを添加することが有効です。逆に、C/N比が低い有機物の場合では多くのチッソが無機化して後作物に利用されやすい形になります。
ポイント!
C/N比による緑肥作物の使い分け
緑肥の後作がチッソ要求量の多いタマネギ等の場合、C/N比の低いマメ科の緑肥作物が有効です。逆に、ダイズではC/N比の高いえん麦等が根粒菌の着生を促進して、よい結果が得られます。
緑肥の使い方
一般的な緑肥作物のまき方・すき込み方
-
播種前の圃(ほ)場準備
ロータリーやハローなどで耕起・整地します。
-
播種
ブロードキャスター、ライムソワー、散粒機、ごんべえ、手まきなどで播種します。
-
覆土
ロータリー(低回転)を2㎝位の深さでかけ、表層のみをかき混ぜます。または、ハローやツースハローなどをかけ、多くの種子が土壌に隠れるようにしてください。
-
鎮圧
ローラーで鎮圧します。ローラーがない場合は、トラクターのタイヤを代用するとよいでしょう。
-
すき込み
チョッパーやハンマーモア、フレールモアなどで裁断し、プラウやロータリーですき込み、作物が小さい場合ややわらかい場合、ロータリーでそのまますき込むこともできます。
-
分解促進
有機物が土壌中にすき込まれると、土壌中の微生物がそれを分解するため多くのチッソを必要とします。このため、土壌はチッソ飢餓の状態におちいりやすくなり、微生物の働きが悪くなります。対策として、石灰チッソなどを添加することでチッソ成分を補い分解を早めることができます。
-
腐熟期間の注意
土壌中にすき込まれた緑肥作物は微生物によって分解されますが、その分解過程の中で一時的にピシウム菌が増殖します。そのため、すき込み後は一定時間(夏季で3~4週間)置いてから後作の栽培に入ってください。また、産地や主作物により適する緑肥が異なります。目的にあった方法でご利用ください。
連作により発生する病害と障害
作物 | 病害と障害 | |
---|---|---|
葉 菜 類 |
キャベツ | 萎黄病、根こぶ病、黒腐病、菌核病 |
ハクサイ | ホウ素欠(尻腐病)、黄化病、根こぶ病、菌核病 | |
根 菜 類 |
ダイコン | 萎黄病、ホウ素欠(横縞病)、軟腐病、赤シン症状 |
ニンジン | ホウ素欠(クロンボ症) | |
ゴボウ | ヤケ症 | |
サトイモ | 腐敗病、ネグサレセンチュウ | |
果 菜 類 |
トマト | 萎凋(いちょう)病、根腐萎凋病、青枯病、褐色根腐病、濃度障害 |
キュウリ | 立枯性疫病、つる枯病、つる割病、濃度障害 | |
ナス | 半身萎凋病、青枯病、半枯病 | |
スイカ | つる割病 | |
エンドウ | 立枯病、茎腐病 | |
イチゴ | 萎黄病、根腐病、濃度障害 |
主な緑肥作物中の肥料成分
作物名 | 生育 ステージ |
乾物率 (推定%) |
1回刈生草重 (t/10a) |
生草重 原物中(%) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
N | P2O5 | K2O | CaO | MgO | ||||
えん麦 | 出穂期 | 16.7 | 3~5 | 0.28 | 0.11 | 0.97 | 0.13 | 0.07 |
らい麦 | 出穂期 | 16.5 | 3~5 | 0.38 | 0.14 | 0.76 | 0.10 | 0.04 |
ソルガム (スーダングラス) |
出穂期 | 21.3 | 6~8 | 0.30 | 0.06 | 0.72 | 0.11 | 0.10 |
ギニアグラス | - | 15.6 | 4~6 | 0.31 | 0.06 | 0.53 | 0.11 | 0.05 |
ひえ | 出穂期 | 15.5 | 3~6 | 0.26 | 0.27 | 0.67 | 0.16 | 0.17 |
クロタラリア | (開花末期) | 17.0 | 4~6 | 0.29 | 0.07 | 0.56 | 0.16 | 0.03 |
へアリーベッチ | 開花期 | 17.5 | 2~4 | 0.51 | 0.15 | 0.63 | 0.37 | 0.08 |
れんげ | (開花期) | 12.0 | 3~4 | 0.49 | 0.19 | 0.55 | 0.16 | - |
あかクローバー | 開花期 | 16.0 | 2~4 | 0.43 | 0.10 | 0.56 | 0.37 | 0.10 |
しろクローバー | 開花期 | 14.9 | 2~4 | 0.64 | 0.13 | 0.50 | 0.30 | 0.09 |
イタリアンライグラス | 出穂期 | 16.4 | 3~5 | 0.33 | 0.13 | 0.69 | 0.11 | 0.06 |
※表中( )は推定。作物が吸収利用できる肥料成分は、N=35%、P2O5=20%、K2O=80%。ただし、緑肥作物の生育ステージとそのすき込み時期により、吸収利用率は異なる。
転換作物の耐湿性
地下水位(cm以下) 0(湛水) |
栽培ひえ・ホワイトパニック(3~4葉期以降) |
---|---|
10 | イタリアンライグラス、れんげ、ペレニアルライグラス |
20 | ギニアグラス、あかクローバー、しろクローバー、そば |
30 | ローズグラス、あわ、ソルガム(少降雨時)、ひまわり |
40 | とうもろこし、マリーゴールド、オーチャードグラス、ムギ類、コスモス |
50 | ソルガム(多降雨時) |
緑肥によるセンチュウ抑制と病害予防
連作栽培などにより過度に土壌を利用し続けると土壌病害や有害センチュウが増加し、作物の品質や収量に多大な悪影響を及ぼします。そんな作物に悪影響を与える病害や有害センチュウは緑肥を利用することで軽減することができます。植物を利用した環境に優しい農業を実践しましょう。
作物別加害センチュウ
作物 | センチュウ名 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
ネコブセンチュウ | ネグサレセンチュウ | シストセンチュウ | |||||
サツマイモ | ジャワ | キタ | キタ | ミナミ | ダイズ | ||
葉 菜 類 |
キャベツ・ハクサイ・ホウレンソウ・ネギ | ||||||
レタス | |||||||
根 菜 類 |
ダイコン・ニンジン・ゴボウ・サツマイモ・ジャガイモ | ||||||
タマネギ | |||||||
果 菜 類 |
トマト・ナス・キュウリ・カボチャ | ||||||
ピーマン | |||||||
オクラ | |||||||
メロン | |||||||
スイカ | |||||||
エダマメ | |||||||
エンドウ | |||||||
インゲン | |||||||
そ の 他 |
イチゴ | ||||||
タバコ |
主な緑肥作物の栽培基準・センチュウおよび害虫の密度抑制効果
1 .すきこみ時期の日数はあくまで目安です。作型によって数値が大きく異なることをご留意下さい。
2. サツマイモネコブセンチュウの抑制効果は暖地での夏まき栽培にて確認。
※事前に圃場の土壌状況をご確認の上使用する緑肥をお決めください。