レタス
生理病害
土壌病害
気象病害
生理病害
育成ステージ上での生育障害や、老化苗定植等、または、収穫遅れによる生理的老化現象が、レタスでは顕著に現れる。また、極早生品種の特性から生理症が発症する場合もある。これは、収穫時に発見できない場合も多く、出荷後の輸送途中・陳列棚・カット後にも発生する。生理症は栽培上の問題と品種特性の二つが原因。品種選択と栽培技術の向上が対策課題である。
-
老化
写真1 ピンクリブの初期
写真2 ピンクリブの後期
写真3 赤軸
写真4 縁ぐされ初期
写真5 縁ぐされ後期
写真6 老化の後期
原因・症状
老化症状として、赤軸・ピンクリブ裂球・縁ぐされがある。
不適切な品種選択・長い育苗日数・活着不良・低温・乾燥・日照不足等による生育遅れが要因。
抽たいとの因果関係はないので、トンネル栽培でも注意が必要。
-
巻き込み腐敗・乳管破裂
写真1 巻き込み腐敗
写真2 乳管破裂腐敗
写真3 巻き込み腐敗
原因・症状
極早生品種群の中で、品種特性から生理症が発生する場合に多くみられる。
これは、収穫時に 発見できない場合も多く、出荷後の輸送途中・陳列棚・カット 後にも発生する。
極早生品種は小球になりやすく、圃場で大きくなるのを待つと、結球葉が緻密になり、巻き込み等が発生しや すくなる。
老化現象へ移行する。
-
チップバーン
写真1 チップバーン
写真2 縁ぐされ
写真3 根部の変色と縁ぐされ
原因・症状
リーフ系に発生しやすい「チップバーン」は、カルシウム欠乏とされている。
葉先が薄く、濃緑色でない品種に出やすい。
カルシウム欠乏の要因は、急激な肥料吸収、根痛み、多施肥等であり、老化現象の「縁ぐされ」と混同されやすく、区別する必要がある。
対策
・「チップバーン」には塩化カルシウムの菓面散布が効果的。
・老化現象の「縁ぐされ」には薬剤散布の効果は期待できない。
・品種選択と発生しにくい栽培環境がのぞまれる。
土壌病害
レタスの連作地では、罹病した病原菌が土壌中にて越年し、発病条件下で激しく多発する。これを土壌病害という。また、病原菌が雑草・他の植物に感染する場合もあり、対策が年々難しくなっている。対策として、病原菌の発生条件を理解し、被害株の除去・輪作・排水対策・除草・加湿対策等に勤めることが大切である。また、発生条件下でのレタス栽培をしないことも必要。なお、抵抗性品種を対策とする連作は、土壌病害の性質から好ましくない。
-
すそ枯れ病
写真1 すそ枯れ病初期
写真2 すそ枯れ病後期
写真3 すそ枯れ病後期
原因・症状
進行すると、軟腐病を併発する。
対策
・高温多湿時に土壌で伝染するので、マルチ栽培・深植え防止・輪作・換気に注意する。
・品種間の格差がある。薬剤散布と被害株の除去で被害の拡大を防ぐ。
-
軟腐病
写真1 軟腐病初期
写真2 軟腐病中期
写真3 軟腐病後期
写真4 軟腐病後期
原因・症状
根・茎・葉の基部・結球部等から発生し、激発的な被害にあいやすい。
悪具を伴うので他の腐敗病と区別しやすい。
高温多湿栽培下で、線虫やハエ等の害虫の食害・傷口から土壌を介して侵入する。
品種間の格差があるが、油断は禁物。
対策
・害虫防除·収穫遅れ防止・高畝·マルチ栽培·排水対策・輪作が対策。
・初期防除が効果的。
・高度化成の多施肥・追肥に気をつける。
-
斑点細菌病
写真1 斑点細菌病初期
写真2 斑点細菌病中期
写真3 斑点細菌病後期
原因・症状
土壌・雑草から病原歯が感染する。
春・秋の長雨などでの高湿で発生しやすく、土壊・霧・雨等による伝染で被害が広範囲に及ぶ。
ハエ等の食害・傷口から侵入する。
下葉から結球葉へ進行し、腐敗病等が併発、圃場が全滅する恐れがある。
高度化成の多施肥で発病する傾向にある。
対策
・品種間の格差はあるが、初期防除が大切。
・全面マルチ・高畝・排水対策・雑草除去が対策。
・高度化成の多施肥で発病する傾向にある。
-
腐敗病
写真1 腐敗病後期
写真2 タール病初期
原因・症状
冬・早春収穫の作型で、葉の表皮が凍霜害により褐色-水浸状になり、軟化腐敗し枯死する。
朝夕の激しい冷え込みで罹病し、収穫期で発生しやすいので壊滅的被害にもなる。
結球葉の内部でも発生し腐敗する。早生品種や耐寒性のない品種で多発する傾向にある。
晩夏・秋収穂の作型で、結球期に葉が暗褐色の光沢となり結球内部でも発病する(別名タール病)。排水不良の畑や長雨での発生が多い。
結球から収穫時で病気への感受性が高まる傾向にある。収穫遅れは禁物。
葉の薄い品種や堅く結球する品種で発病しやすい。
腐敗病の伝染源は、土壌細菌。
対策
・低温時での被覆資材の利用や早期トンネル掛け、収穫遅れに留意する。
・輪作・排水・高畝・マルチ資材等の対策と予防散布が必要。
・微生物農薬の散布も効果的。
-
根ぐされ病
写真1 ネコブセンチュウ
写真2 フザリウム菌
①寄生線虫による根ぐされ病
原因・症状
ネグサレセンチュウ類が根の組織で産卵増殖をくりかえし、根が変色-腐敗-壊死し、地上部の生育が阻害される。また、ネコブセンチュウによって細根にコブができ、養分水分の吸収が妨げられる。
地上部では、下葉の黄化・小球等の生育不良となる。
対策
・定植後の発病には対処は難しいので、微生物の豊かな土壌作りと対抗植物(えん麦・マリーゴールド等)の植え付けが対策。
②フザリウム菌による根ぐされ病
原因・症状
主根の内部が褐変腐敗する。
生育が著しく不良となり下葉が黄化・小球・不結球となる。
発病症状は、温度上昇と比例関係にあり20℃以上で生育が止まり、しおれる。低温(夜間)で復活し、これを繰り返す。
罹病すると生育ステージ全般に影親を受けるので、生育遅れ、不結球・変形球・老化玉・巻き込み症・腐敗病の原因となる。
対策
・連作により被害が拡大するので、発生株の除去・輪作体系・健全な土嬢作りが重要。
-
ビッグベイン病
写真1 ビッグベイン病
写真2 ビッグベイン病不結球
原因・症状
冬収穫の作型で、12月中旬から発病し2月頃がピークとなる。
葉脈が透過し、太い葉脈のように見え、進展すると外業の縮れが細かくなり虎斑点状になる。
不結球・小球・老化球・変色球となり商品価値が低下する。
発病地温は17℃以下、PH6.0以上、多湿条件下で発病する。
伝染源は土壌細菌で、一度発生すると、圃場に長期間生存する。このため、連作地では被害株の2次汚染により汚染圃場が拡大する傾向にある。
対策
・育苗容器の消毒・土壌の酸性化・土壌消毒・栽培時期変更・輪作等の総合対策により被害の拡大を防ぐ。
糸状菌の病害
カビ(糸状菌)は、多湿と適度の温度条件下で増殖する。植物に寄生し、有機物を分解・吸収し生育障害をもたらす。植物の生育環境の様々なところで出現するので、発生・罹病させない栽培体系・環境・予防散布を考慮する必要がある。空気の流れの悪い圃場や多湿土壌で発生しやすい。いったん発生させると、進展を止めることが難しく、壊滅的被害となりやすい。また空気・霧伝染からの発生も多く、広範囲の被害になる。肥料切れの株・徒長株・老化株が被害に遭いやすいので健全な生育ステージが望まれる。
-
灰色カビ病
写真1 灰色カビ病後期
写真2 灰色カビ病後期
原因・症状
発病に好適な温度は約20℃で、多湿条件下で地際の茎・葉に灰色のカビを密生する。
進展すると株全体が枯死する。
11月から4月頃のハウス栽培・トンネル栽培の全生育ステージで発生する。
伝染源は、越年した被害株の菌糸・分生胞子で空気伝染もする。
朝夕の急激な冷え込みは、本病を助長する。
収穫遅れの老化株で発生しやすくなる。
対策
・密植栽培、軟弱徒長を避け、高畝・マルチ対策を行い、トンネル換気で高温・多湿を防ぐ。
・いったん発生すると防除が難しくなるので、気象条件に合わせた予防散布が効果的。
-
菌核病
写真1 菌核病初期
写真2 菌核病初期
原因・症状
低温多湿条件下で発生しやすく、土に接する茎・葉の基部に白色綿のカビが生じ腐敗する。
進行すると株全体が腐敗する。
伝染源は前作の被害株からの菌糸と胞子が飛散する空気伝染である。
対策
・10月から4月頃の低温多渥条件下で発生しやすく、ハウス栽培・トンネル栽培の換気に留意して加湿を防ぐ。
・密植栽培、高畝・マルチ対策、輪作を行う。
・いったん発生すると防除が難しくなるので予防散布が効果的である。
・他の野菜·花からの空気伝染も考慮し気象天候に合わせた防除を行う。
・灰色カビ病対策の薬剤と同時散布する。
-
ベト病
写真1 ベト病初期
写真2 ベト病中期
原因・症状
葉の表に葉脈黄緑色の斑点ができ、葉の裏に灰白色のカビが発生する。
進展すると株全体が黄緑色の斑点模様となり商品価値が著しく低下する。
伝染力が強いので壊滅的被害となりやすい。
発生適温は20℃で、低温多湿条件下で発生する。早春収穫の作型では、秋冬の低温期の感染後、春先の温度上昇・多湿下で激発し被害が拡大する。
初夏収穫の作型では、育苗時に感染し、本圃での低温多湿で激発する。
軟弱生育株・収穫遅れ株・老化株が被害にあいやすい。
罹病した雑草・他の野菜からの空気・霧伝染により広範囲で発生する。
対策
・初期防除・罹病株の除去隔離が肝要。
・流行性があり気象天候に合わせた防除を育苗時から行う。
気象の病気
-
凍霜害
写真1 凍霜害
写真2 凍霜害
原因・症状
冬どりレタスにおいて、最低気温が0℃以下になると、レタスの結球葉表面が結氷により表皮組織の剥離が発生する。これは低温障害。特に、暖冬気味の温度生育経過後に低温に遭うと、0℃以上でも発生する。結球体制でこのような凍霧害を受けると、腐敗病の原因となる。
1・2月収穫の作型で発生しやすく、早生品種での被害が大きい。
細菌斑点病と併発することもある。
長すぎる育苗、老化苗定植、活着不良、収穫遅れは被害率が大きくなる傾向にある。
対策
・被覆ビニールを厚くする。
・ベタ掛け資材による二重被覆を行う。
・早生品種に出やすいので、葉肉の厚い中晩生品種を使う。
・被覆ビニールの新しいものを厳寒期に使う。
・暖冬傾向の年には換気を強くして、軟弱化させない。
-
腐敗病
写真1 腐敗病
原因・症状
低温で、表皮剥離した結球葉の傷口に細菌が侵入し、高温多湿にて罹病する。
寒さの厳しい厳寒期での発生が多く、時には結球内葉でも発生する。
空気中の水分で拡散し、放置すれば広範囲で激発することが多い。生育遅れの老化した早生品種がかかりやすい傾向にある。
対策
・老化苗は植えない。
・活着不良に気を付ける。
・低温·乾燥での生育遅れを避ける。
・低温予報に合わせた、被覆管理をする。
・収穫遅れの老化球にしない。
・初期防除に努め、病気を拡散させない。
・中晩生品種で葉肉の厚い品種を選定する。
-
育苗での高温障害
写真1 高温障害
原因・症状
ビニールハウス育苗で、ハウス内の温度が25~30℃以上になると、芯葉の成長が止まることがある。一度この高温障害にかかると回復はしない。
この苗を定植すると不結球となる。
高温の空気が停滞する場所で発生するので、育苗箱内で全てが発生するとは限らない。
ハウス育苗では、空気の循現を良くし、25℃以上にならないように換気に努める。
対策
・通風の良い場所で育苗する。
・寒冷紗等で高温を防ぐ。
・育苗棚を腰高にして、通風をよくする。
・高温期で育苗室の温度を下げるのには限界があるので、通風の良いネット育苗が最適。ネット育苗の利点は、温度が上部から抜ける、降雨が多少であれば被害がない、害虫の侵入を防げること。
詳細は専門書をご覧いただきたくお願い申し上げます。