発芽
種子と発芽について
種子の性質
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1.水、空気、温度。発芽に重要な3要素。
種子は水と空気(酸素)があり、且つ適当な温度条件の時に発芽します。
耕作に適した土壌には、水や空気が通る隙間があります。降雨後の湿った畑で耕起や畝立てをすると、隙間がつぶれて土が固くしまり、過湿や酸欠になって発芽にも悪影響を及ぽします。また、は種後に鎮圧をかけないと乾きやすくなり、これも発芽に良くありません。灌水量も少なすぎはもちろん、多すぎても土壌が硬化し、悪影響となります。「土壌中の水分と空気のバランス」に気を配ることが大切です。
野菜の種類によって発芽に好ましい条件は異なり、繊細さにも差があります。
図1発芽に必要な3要素
3つの要素が相互作用し、環境が整った時に発芽する。
光の有無が関係するものもある。表1.各野菜の発芽適温
多くの野菜が20~25℃を発芽適温とするが、
より低温、高温を好むものがあり、適温の幅にも差がある。 -
2.種子は休眠します。
種子が一時的に発芽しなくなる現象を休眠といいます。高温や乾 燥などのストレスも原因となり、発芽が遅れたり不揃いになります。
自然界では、水分条件や温度がその植物の生育可能な範囲になければ、仮に発芽しても死滅する運命にあります。休眠とは、植物がそのような悪条件をやり過ごすための性質だと考えられています。 -
3.種子には寿命があります。
種子も生き物なのでいつかは発芽力を失います。種類によって寿命は異なり、数年から10年以上のものまで様々です。高温多湿条件ではいずれの種子も寿命が縮むため、注意が必要です。発芽の勢いも衰えるので購入した種子はなるべく早く使いきってください。
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4.どの時点で問題が起きたのか? 発芽不良にもいろいろ。
発芽不良には様々な原因があります。例えば①不良濃境による発芽力の消失、②休眠による発芽遅延、③発芽後の環境変化による枯死、④病虫害による立ち枯れなどが挙げられ、どの時点でどのょうな問題が生じたのかを整理することで、再発の防止につながり ます。
ネギ
短命で繊細。特に加湿に弱い。
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種子の特性
ネギの種子は寿命が短く、1~2年ほどで発芽力を失います。他の野菜に比べて繊細で、特に過湿に弱いです。
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発芽特性
発芽適温:15~25℃
4℃以下、33℃以上ではほとんど発芽しません。
他の野菜よりも発芽に時間がかかり、最短でも5~7日を要します。また発芽後も生育が遅く、幼苗期は脆弱なので注意が必要です。
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育苗管理
ポット育苗では、過湿にならないように気をつけてください。種子が水に漬かるような状況では発芽しにくく、多少湿り気がある程度で十分です。
一方で乾燥しすぎると休眠することがあり、発芽が不揃いになります。発芽までは適度な湿度を保つため、必ず覆土をして種子がむき出しにならないように注意します。ネギの種子は嫌光性で、その点からも覆土は欠かせません。
図2.ネギの育苗
ホウレンソウ
高温で休眠。できる限り涼しい環境を作る。
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種子の構造
ホウレンソウの種子は硬いカラに包まれています。このカラは種子を保護する一方で、発芽の妨げとなることがあります。現在では、販売種子のほとんどがプライミング処理(発芽促進処理)され、より短時間で発芽し、揃いも向上しています。
図3.種子の構造
ホウレンソウの種子(b) は硬いカラをもつ。
aはカラを除去した状態。cは販売用のプライミング種子。 -
発芽特性
発芽適温:15~20℃
冷涼な気候条件を好みます。高温が続くと休眠し、発芽が遅れたり不揃いになリます。25℃以上で抑制され、35℃以上ではほとんど発芽しません。
図4異なる温度条件での発芽率の推移
高温ほど発芽が遅れ、発芽率も低下する。
※ 25℃8時間、30℃ 16時間の変温条件。 -
高温期の発芽対策
日中の地温上昇を抑え、夜間に発芽適温へ近づけることが肝心です。
まず「いつまくか」が重要です。プライミング種子は、条件が揃えば3日目には発芽し始めます。そのため、は種後3日間がなるべく涼しい時を選びます。特に夜温に注目し、25℃以上の熱帯夜が続く時は控えてください。夕方には種し、夜間の涼しい時間帯に吸水させることも効果的です。
発芽が揃うまで(天候に応じて生育期間中も)は、地温を下げるために遮光資材を利用します。夕方に軽く灌水し夜間温度を下げることも有効です。
乾燥も発芽が遅れる原因となります。発芽するまでは土壌が乾き過ぎないよう適度に灌水を行います。
図5.a·b.遮光資材を活用した温度対策
白黒マルチや遮光ネットを使用した栽培。各産地でいろいろな工夫がなされる。
ニンジン
発芽に時間がかかり、土壌環境の影響を受けやすい。
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発芽特性
発芽適温:15~25℃
ニンジンは他の野菜よりも発芽するまでに時間がかかり、最短でも6~7日を要します。 そのため高温期では、は種時に充分な水分があっても、発芽する前に土壌が乾燥して枯死することがあるので注意が必要です。また、乾燥するタイミングや条件によって休眠状態となり、その後の降雨により乾燥が改善されても1ヵ月ほど発芽しないこともあります。
図6.休眠による発芽遅れ
ニンジンの種子は乾燥するタイミングや条件によって休眠状態となる。
一度休眠すると乾燥が改善されても1ヵ月ほど発芽しないこともあり、不揃いの原因となる。 -
夏まきの発芽対策
早く一斉に発芽させるためには、乾燥させないことが肝心です。乾燥が激しい場合は灌水が必須となります。また、少し深めには種すると乾燥が緩和し地温も下がるので、発芽しやすくなります。
夕立や強い降雨の後に乾燥すると、地表面が硬化し双葉が出にくくなります。タイミングを見計らって灌水することで、地表面を柔らかくし発芽しやすい状態にできます。
発芽後の管理
ニンジンは発芽後も生育が遅く、本葉3~4枚目まで育つのに約1ヵ月かかります。この間は苗立ちが弱く注意が必要です。
近年は土壌が極端に乾燥することが多く、地際部が焼けて枯死する現象が見受けられるようになりました。その場合、軽く灌水し地温を下げると効果的です。
一方で強い降雨により土壌がしまった状態になると、高温多湿となり立ち枯れ病が発生しやすくなります。その際は、条間を中耕(固くなった地表面を割る要領で深さは数センチ程度)し、土壌に酸素を供給して根の伸長を促進させます。また、日常から輪作体系を考慮し、良質な堆肥を施用することで、病害菌の少ない膨軟な土壌を作っていくよう心がけましょう。
図7発芽不良の原因
ニンジンは発芽と初期生育に時間がかかるため、環境の影響を大きく受け、発芽不良になることも少なくない。
原因も様々で、どの時点でどのような現象が起きたのかを整理することで、再発の防止につながる。