令和元年12月3日(火)茨城県農業総合センター園芸研究所(岩間市安居)にて開催された。今回は栽培期間中、夏から秋にかけて台風が繰り返し通過する異例の気象条件となり、圃場の冠水による病害や暴風雨による株の倒伏が発生するなど厳しい栽培環境となったが、栽培ご担当者の迅速なご対応により、大きな問題なく審査を行うことができた。
審査会の開始にあたり、茨城県農業総合センター園芸研究所を代表して折本善之・所長より開会挨拶があり、続いて日種協技術研究委員会を代表して畠中誠·副委員長(タキイ種苗㈱より謝辞が述べられた。続いて、農研機構野菜花き研究部門野菜育種ゲノム研究領域の山田朋宏・ネギ属ユニット長を審査長として打合せを行った。
続いて栽培を担当された柏木未紀·主任より耕種概要の説明があった後、立毛100点・収穫物300点の計400点満点による審査を実施した。
審査圃場全景
立毛審査の様子
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耕種概要
栽培場所
茨城県農業総合センター園芸研究所 露地圃場No.37
土質
黒ボク土
前作
ハクサイ
試供品種
24点
栽培規模
1区7.2㎡ (1.8㎡×4畝)、2区制
栽植様式
畝間90cm、株間3cm(植穴間隈6cm)、深さ15cm溝植え、37,000株/10a
播種
4月19日 200穴セルトレイに1穴2粒播き(培養士は「げんきくんネギ培土800」)
播種後はガラスハウス内で育苗した。定植
6月19日
施肥
土壌改良剤 6月12日 ベストライム 79kg/10a
基肥
6月14日 CDUタマゴ化成 S555 79kg/10a
重焼燐2号 37kg/10a
海の宝 157kg/10a
基肥成分量 【N: P2O5:K2O = 12:25:12】(kg/10a)
追肥
9月6日、9月24日、10月10日 NK2号 32kg/10a(株元施用3回)
10月21日、10月28日、11月5日 メリット青(葉面散布3回)
追肥成分量【N:P2O2:K2O= 15:0:15】(kg/10a)薬剤防除
薬剤使用基準に基づき適宜、防除を実施した。
管理
5月24日、5月31日および6月12日に葉切りを行った。
土寄せを7月26日、9月6日、9月24日、10月10日および11月7日に行った。
防風対策として圃場南側へ防風ネット設置、ならびに圃場周縁にソルゴーを播種した。参加者総出ネギの調整を行った
収穫物審査の様子
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生育期の気象状況・生育状況
生育期間中の気象状況について、播種後、発芽のころは気温が低く日照が少なかったが、その後は定植期まで気温は平年より高く推移した。7月は曇天が続き、平均気温も平年より低く推移した。8月上中旬は高温·干ばつが激しく、以降も気温は平年並みか高く推移した。9月は台風15号、10月は台風19号および25号の影響で、暴風雨に遭遇した。
生育状況として、育苗中に鱗翅目の発生がみられたため、薬散で対応した。定植時一部の系統で2本立ちの苗が不足したので、1本立ちの苗と合わせて2本立ちとして補完した。その後の生育には、達観で影響はみられなかった。定植後、ネキリムシの被害が発生したため、補植および薬散で対応した。
7月下旬から葉先枯れ様症状がみられ、ネギえそ条斑病とウイルス同定された。アザミウマ類の防除により対応した。
8月1日から圃場の一部でネダニ類およびタネバエの発生を確認したため、抜き取りおよび薬散で対応した。8月16日に台風10号に伴う強風の影響で一部に葉折れが生じたが、生育に大きな影響は無かった。
9月7日に台風15号の影響により襟部の冠水および葉折れ、一部倒伏、ソルゴーの倒伏が発生したが、倒伏株を起こし、薬散および土寄せの手直しなどで対応した。9月17日から軟腐病が圃場の一部でスポット的に発生したため、順次抜き取りおよび薬散で対応した。
10月12日に台風19号の影響により圃場の全体で葉折れ、溝への湛水、一部倒伏が発生し、倒伏株を起こし、薬散で対応した。10月15日から全体で葉先枯れ症状および黒斑病、一部で葉枯病が発生し、薬散および葉面散布で対応した。10月25日に台風25号に伴う豪雨の影響で、圃場の全体で溝に湛水した。10月27日から全体で葉先枯れが発生し、薬散および葉面散布で対応した。
11月以降は順調に生育してきたが、11月29日に強い降霜があり、一部系統で葉折れがみられた。
結果発表および講評
審査終了後には、茨城県農業総合センター園芸研究所病虫研究室の窪田直也主任より、「ネギアザミウマ類の防除」に関する話題捏供があった。
休憩を挟んで、山田審査長より入賞品種の発表があり、「本年は、台風が関東地方を幾度にもわたり通過する大変厳しい条件の中で栽培となり、栽培ご担当者におかれては軟腐病など様々な病害の発生でこ苦労されたと思うが、適切な栽培管理をして頂いたおかげで、出品品種それぞれの特性が良く発揮された。今回、入賞とならなかった品種の中でも、栽培方法や作型によって特長が十分に発揮されると思われるものがあったので、普及に向けて今後とも取り組みを進めて頂ければと思う。」との講評があった。
その後、日本種苗協会茨城県支部を代表して野手稔・支部長(㈱野手のタネ)より、栽培管理や審査会の設営に携わったご担当者各位への御礼と併せ「今回の審査会の結果を参考にして、県内産地への優良品種の普及に努めたい。」とのご挨拶があり、審査会は閉会となった。
審査結果【ネギ(秋冬どり)】(400点満点)
順位 立毛 収穫物 合計 等級 品種名 出品者 1 80.73 257.10 337.83 1等特 サカタ交配 K9-046 ㈱サカタのタネ 2 77.93 246.71 324.64 2等 タキイ交配 No.1058 タキイ種苗㈱ 3 82.20 240.90 323.10 2等 ダイヤ交配 No.8333 トキタ種苗㈱ 4 82.13 238.70 320.83 3等 タキイ交配 No.1049 タキイ種苗㈱ 5 78.67 241.20 319.87 3等 サカタ交配 K7-118 ㈱サカタのタネ 6 78.47 239.81 318.28 3等 松島交配 白林 ㈱渡辺採種場 1等特別賞「K9-046」
審査員内訳
官公審査員
・農研機構野菜花き研究部門
・栃木県農業試験場
・富山県農林水産総合技術センター園芸研究所
・神奈川県農業技術センター
・茨城県農業総合センター園芸研究所日種協
・野菜種子部会員
・茨城県支部会員