
令和元年12月24日(火)石川県農林総合研究センター農業試験場(金沢市才田町)にて実施した。
石川県での切り花ハボタンの全日本品種審査会は平成29年に実施されて以来、2年ぶりの開催となる。金沢市でのハボタン生産は砂丘地を中心に行われており、平成20年以降の10年間で生産本数が2倍に、また生産額は3倍に増えている有望な品目とのことである。本年は記録的な暖冬となり出品品種に色戻りが生じるなど栽培ご担当者のご苦労も多かったが、入念な管理を頂き、大きな問題なく審査を行うことができた。
審査会の開催にあたり、石川県農林総合研究センター農業試験場を代表して南晴敬・次長より御挨拶があり、続いて、日種協花き栄養繁殖性植物部会を代表して、相澤篤氏(タキイ種苗㈱)より謝辞が述べられた。
今回は農研機構野菜花き研究部門の市村一雄・花き研究監を審査長として打ち合わせを行い、栽培担当の山崎いづみ・技師より耕種概要の説明があった後に、立毛100点満点の審査を実施した。

石川県農林総合研究センター外観

審査温室全景
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耕種概要
栽培場所
石川県農林総合研究センター農業試験場 ピニルハウス
前作
フリージア
土質
壌土
試供品種
12点
栽培規模
1区49株、2区制
播種
令和元年7月16日 128穴セルトレイを使用し、1粒播きした。培土及び覆土には与作N150を用いた。
育苗
無加温ハウス内で管理した。
定植
令和元年8月6日
栽植様式
株間12cm、条間12cm、7条植え(フラワーネットを利用)
管理
土壌表面から5cm程度の深さで水分を確認し、かん水した。
定植後、平均気温が20℃を下回る10月中旬までは25℃で側窓が開く設定にし、ハウス前後は開放した。10月下旬以降に夜温が15℃を下回る場合は、側窓およびハウス前後を閉め切り早期の着色を防いだ。ハウス内の平均気温が15℃を下回った11月23日からは終日開放し、 着色を促した。
葉かきは10月31日、12月3日に行い、着色した葉から外側3周分の緑色の葉を残し、JA全農いしかわの出荷規格に合わせた。施肥
ゆっくりくん2号 7kg/a
燐硝安加里S604 2kg/a
合計成分量 【N:P2O5:K2O = 1.02:0.9:0.98(kg/a)】薬剤散布
使用基準に従い、薬剤を散布した。
7月30日 アファーム乳剤 8月6日 カルホス微粒剤F 8月8日 ノーモルト乳剤 8月19日 アディオン乳剤、ダコニール1000 8月28日 カスケード乳剤 9月1日 フェニックス顆粒水和剤 9月6日 フルピカフロアブル 9月27日 プレオフロアブル、ゲッター水和剤 10月3日 アディオン乳剤、トップジンM 10月15日 エスマルクDF、ダコニール1000 10月24日 フルピカフロアブル、アファーム乳剤 10月31日 カスケード乳剤、ゲッター水和剤 11月7日 ロディ乳剤、トップジンM 11月21日 プレオフロアブル、ダコニール1000 12月4日 アディオン乳剤、フルピカフロアブル 審査の様子
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生育期の気象径過および生育状況
生育期間中の平均気温は、8月1〜3半旬、9月2〜3半旬、9月6半旬~10月1半旬、10月5〜6半旬、11月3〜5半旬および12月3〜4半旬は平年より高く、8月5半旬~9月1半旬、11月2半旬、6半旬および12月2半旬は平年より低く推移した。日照時間については、8月1〜3半旬、9月2〜3半旬、10月6半旬〜11月3半旬、12月2半旬~4半旬は平年より長く、それぞれ平年の1.5倍、1.8倍、1.4倍、1.6倍であった。一方、8月4〜6半旬、10月3〜5半旬は平年よりも短く、それぞれ平年の59%、49%であった。
ハウス内の温度管理について、栽培期間中の日平均気温は4.2〜32℃の範囲で推移し、11月20日頃から15℃を下回った。日最高気温は10.2℃〜48.4℃の範囲で推移し、日最低気温は-2.2〜24.4℃で推移した。
生育状況について、葉の着色は11月中旬ごろから開始した。気温は12月中旬が平年より高くなったため、色戻りした品種も一部でみられた。病害虫については8月上旬から10月下旬にかけてコナガ、10月下旬から11月下旬にかけてアブラムシが発生したが、防除により被害はなかった。
結果発表および講評
審査が終了した後は、石川県農林総合研究センター農業試験場の三輪章志企画調整室長ならびに山崎いづみ技師より「石川県農林総合研究センター農業試験場の概要説明 」として、フリージア『エアリーフローラ』やブドウ『ルビーロマン』を始めとする石川県オリジナル品種のご招介やハポタンの極小輪栽培方法の検討など、様々な試験研究に関する話題提供が行われた。
読いて休憩を挟んだ後に市村審査長より入賞品種が発表され、併せて「ハボタンの需要は年末に集中しており、今後、需要を拡大していくためにはアレンジメントなど他の用途を検討していく必要があると思われる。近年は、12月の気候が安定しないごとから、種苗メーカー各社におかれては気象環境に対応できる特性も含め新品種の開発を進めて頂ければと思う。」との講評があった。
終わりに、日種協石川県支部を代表して松下央氏(㈲松下種苗店)より、栽培担当機関への御礼と併せ「石川県ではこの年末の時期の気候は曇天が多いが、本年のように晴天が続くことは異例であり、出品品種には色戻りも目立ち暖冬の影響が大きく出た審査会になった。石川県では約60万本のハボタンの出荷が見込まれるが、金沢市の出荷はそのうち32万本程度を占める大産地となっている。今後も有望な品種の普及にあたり、関係名位からのご指導を頂ければありがたい。」との言葉を以て閉会した。
審査結果【ユーストマ(秋出し)】(100点満点)
順位 得点 等級 品種名 出品者 1 87.30 1等特 EB-677 タキイ種苗㈱ 2 85.70 2等 エレガンス ㈲石井育種場 3 81.20 3等 高性丸葉白533 ㈲石井育種場 4 80.20 3等 EB-679 タキイ種苗㈱ 1等特別賞「EB-677」
審査員内訳
官公審査員
・農研機構野菜花き研究部門
・富山県農林水産総合技術センター
・兵庫県立農林水産技術総合センター
・和歌山県農業試験場
・石川県農林総合研究センター農業試験場日種協
・花き栄養繁殖性植物部会員
・石川県支部会員