令和元年11月22日(金)茨城県農業総合センター園芸研究所(笠間市安居)にて実施した。今回は栽培担当機関のご都合により、出品品種の播種から育苗までの作業を日種協会員の種苗会社に委託し、栽培担当機関では苗の定植から栽培を行うこととなった。定植後の気象経過と長日処理の影響から、開花が想定よりも早まったため、当初12月上旬で予定していた審査会を2週間程度早めての開催となった。
審査会の開催にあたり、栽培担当機関を代表して折本善之・所長より御挨拶があり、また日種協花き栄養繁殖性植物部会を代表して徳弘晃二氏(カネコ種苗㈱)より謝辞が述べられた。
今回は農研機構野菜花き研究部門の山口博康・ゲノム遺伝育種ユニット長を審査長として打ち合わせを行い、栽培担当の鈴木一典・花き研究室長より耕種概要の説明があった後に、立毛100点満点の審査を実施した。
審査温室全景
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耕種概要
栽培場所
茨城県農業総合センター園芸研究所内 パイプハウス
前作
ソルゴー
試供品種
23点
栽培規模
1区44株 (11株×4列)、2区制
栽植様式
10cm x 10cm x 6目のフラワーネットを利用して、中央2条を空けた4条並木植えとした。
育苗
播種から育苗の作業は、住化農業資材㈱に一括して委託した。
5月20日にスミソイルオリジナル培土を406穴セルトレイ(縦1.6cmx横1.6cmx深さ3.2cm)に充填した。1穴あたり2〜3粒ずつ播種し、トレイ下部から水が滴り下りるまで灌水した後、トレイをポリフィルムで被覆し、10℃暗黒下の冷蔵庫内で4週間冷蔵処理を行った。
6月17日に冷蔵庫から出庫し育苗ハウスにて育苗を開始した。(暖房17℃、自動換気25℃設定)。発芽以降育苗終了まで液肥を週1回施用した。また、農薬も適宜散布した。本葉1対目が子葉と同じ大きさになった頃に、間引きを行い1穴1本に仕立てた。7月24日より冷房設備のあるハウスに移動させ冷房育苗を開始した (6時~17時は25℃、17時~6時は15℃設定、9時~15時まで50%シルバー遮光を被覆した)。
8月18日に育苗を終了し苗を発送し、19日に到着した。土壌消毒
6月26日から7月25日にバスアミドによる土壌消毒を行った。
定植
8月20日に、上記栽植様式の要領で定植した。定植後の昇温防止のため、遮光ネット(50〜55%遮光)を8月26日まで被覆した。
管理
開花促進を目的に、白熱電球100V75Wを用いて長日処理を行った。電球は畝上1.5mの高さに2.5mx3mの問隔で設置した。8月26日から9月23日まで、17時~21時と3時~7時に点灯させ、18時間日長とした。温度管理として、定植後から9月下旬までハウスサイドを常時開放し、その後、10月7日から28℃換気、10月16日から25℃換気、15度加温で温度管理した。11月8日からは、夜間のみ内張りを展張した。
供試した全品種について、発蕾を確認した主茎頂花は適時摘除し、下位4節以下に発生した側枝は除去した。11月11日までに発生した老け花は病害予防のため除去した。施肥
6月14日に牛ふん堆肥200kg/aを施用し、8月9日にエコロング413 (40日タイプ)をN成分で0.6kg/a施用した。
薬剤散布
本圃での栽培期間中、殺虫剤を8回、殺菌剤を3回散布した。
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生育期の気象経過および生育状況
気象経過について、定植後の8月下旬は最高気温が平年よりも低く平均気温は同等かやや低く推移した。9月は、最高、平均および最低気温とも平年より高く推移し、9月10日には35℃を超える猛暑日、9月下旬になっても真夏日が観測される高温月となった。10月も9月と同様に高温で推移し、下旬になっても最低気温は平年よりも高いままであった。11月は、上旬が平均気温と最低気温がやや低かったが、中旬以降は最高、平均および最低気温ともに平年よりも高く推移した。
日照時間は9月第1半旬までは平年を下回って推移し、その後10月上旬までは平年並みから長くなった。10月中旬以降は平年を下回って推移し、11月上旬以降は平年よりも長くなった。
生育状況については、8月下旬は気温が平年より低く推移し、定植した苗の活着は順調であった。9月は気温が高く推移し長日処理の効果もあって、発蕾は早まった。発蕾は最も早い品種で9月22日、最も遅い品種で10月2日であった。10月以降も気温が高く推移し、生育と開花が促進された。開花は、最も早い品種で10月26日から始まり、最も遅い品種で11月13日であった。病害虫の大きな発生は特にみられなかったが、灰色かび病と思われる病害株が微発したため除去した。また、ヨトウムシ類が微発したが、農薬散布により防除できた。
バラ試験温室の視察
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結果発表および講評
審査が終了した後は、花き研究室の永井技師のご案内により、参加者は茨城県農業総合センター園芸研究所内のバラ試験温室などを視察した。
続いて、休憩を挟んだ後に山口審査長より入賞品種の結果発表があり、併せて「今回の作型は、茨城県として栽培を増やしていきたい作型であると聞いている。花のボリューム不足が課題になる作型だが、本年のような気候ではそれがさらに顕著になると思われるので、解決のためには品種の力が期待されると思われる。夏場の暑さは来年以降も続くと思われるので、それを念頭に置いた育種開発を進めて頂けることを期待したい。」との講評があった。
終わりに、日種協茨城県支部を代表して野手稔・支部長(㈱野手のタネ)より、厳しい気象条件の中で入念な管理をして頂いた栽培ご担当者への御礼と併せ、茨城県内でもユーストマの生産は増えているので、新たな作型を開拓していく上で、種子メーカーの皆様におかれては今後ともご尽力を頂ければありがたいとの言葉を以て閉会した。
審査結果【ユーストマ(年内出し)】(100点満点)
順位 得点 等級 品種名 出品者 1 82.91 1等特 スノースマイル 福花園種苗㈱ 2 82.45 2等 SM5-103M ㈱サカタのタネ 3 82.36 2等 F16-390 住化農業資材㈱ 4 82.18 2等 オーブイエロー ㈱サカタのタネ 5 81.00 3等 K487 カネコ種苗㈱ 6 80.64 3等 ホワイトティアラ 福花園種苗㈱ 7 80.36 3等 F16-349 住化農業資材㈱ 1等特別賞「スノースマイル」
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審査員内訳
官公審査員
・農研機構 野菜花き研究部門
・福島県農業総合センター
・長野県野菜花き試験場
・茨城県農業総合センター園芸研究所日種協
・花き部会員
・茨城県支部会員