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ユーストマ
(季咲き)
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ユーストマ
(季咲き)
令和2年7月31日(金)福島県農業総合センター(郡山市日和田町)を会場として開催された。本年も例年と同様、播種後から育苗時の低温や、定植後の気温の乱高下など非常に不安定な気象条件下での栽培となった。その影響か、チップバーンやブラスチングなどの生理障害も多くみられたが、栽培ご担当者による適切な管理により、審査当日にはほぼすべての出品品種が開花盛期を迎え、各品種の特性を十分に判断できる状態で審査を行うことができた。
審査会の開催に際しては、新型コロナウイルスの感染拡大防止の対策として、①原則として屋外で実施②審査員が密集しないよう間隔に注意して審査を行う③会場での滞在時間は最小限にとどめる、といった措置を取りながら行うこととなった。
開始にあたり、日本種苗協会を代表して谷口和範氏(住化農業資材㈱)より謝辞が述べられた。続いて農研機構野菜花き研究部門花き生産流通研究領域の 中山真義·領域長を審査長として審査手順などの打合せが行われ、栽培を担当された山口繁雄・花き科長より審査員に対して耕種概要の説明があった後に、圃場に移動して立毛100点満点の審査を実施した。
会場となった福島県農業総合センター
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耕種概要
栽培場所
福島県農業総合センター内 パイプハウス
前作
ユーストマ(~令和元年 11月)
土質
褐色低地土
試供品種
22点
栽培規模
1区40株(4株×10列)、2区制
栽植様式
ベッド幅70cm、株間12cm、条間12cm、中央1条を空けた4条植え
播種
2月20日 用土として与作N-20を充填した288穴セル成型トレイに播種し、催芽のため26℃・20時間日長に設定した苗テラスに7~8日間入庫した。プラスチックカバーで覆い、常時底面から給水した。
育苗
苗テラスから出庫後、3月19日までは15℃加温・22℃換気に設定したガラス温室内で、地温が20℃になるように電熱マットで加温し、夜間のみトンネル被覆(農ポリフィルム+不織布)した。
3月19日以降は10℃加温、20℃換気に設定した。土壌消毒
3月4日~3月26日にクロルピクリン錠剤で畦内消毒を実施した。
定植
4月17日 白黒ダブルマルチ(白上)の無加温バイプハウス内に定植した。
管理
育苗中は底面より給水処理を行い、3月3日以降、1セル1本になるように間引きを実施した。定植後1週間は、保湿のため不織布(パオパオ)によるべたがけ被覆を行い5月中旬より点滴チューブでマルチ内かん水を行った。温度管理として、4月17日~5月11日で開30℃、閉28℃、換気扇28℃、5月11日~6月15日で開25℃、閉18℃、換気扇23℃とし、6月15日以降は天気の様子を見ながらサイドを開放した。
側芽整理について、5月19日に株元の側芽を除去した。また、6月15日以降、地表面から約20cmまでの間に発生した下位分枝は除去した。
5月26日~6月25日に、萎れが目立つことから遮光率30%の遮光幕で被覆した。施肥
pH6.3、EC 0.99ms/cmであったため、以下の通り施肥を行った。
基肥:土作り肥料(畑のカルシウム)を全面散布(6kg/a)
追肥:5月9日と5月15日の2回、それぞれ液肥(ピータース20-20-20 2000倍を約100ml/株薬剤散布
農薬使用基準に従い、薬剤を散布した。
3月6日 トリガード液剤1000倍(セルトレイ )
4月17日 オルトラン粒剤 3kg/10a(定植時)
5月20日 コテッフロアブル 2000倍
5月25日 リゾレックス水和剤 750倍
5月28日 ユニフォーム粒剤 18kg/10a
6月11日 ディアナSC 2500倍
7月2日 アディオンフロアブル 1500倍
7月8日 アファーム乳剤 2000倍
7月15日 デイアナSC 2500倍
7月21日 アディオンフロアブル 1500倍 -
生育期の気象経過および生育状況
気象経過について、2~3月は気温が高かったが4月に入ると低くなり、5月に入ると気温が再び上昇した。5月下旬に一時期気温が低くなったものの、6月に入ると平年よりかなり高くなった。梅雨に入るとほぼ平年並みの気温となったが、日照不足が続いた。
生育状況について、定植直後の4月下旬は気温が低かったが5月に入ると気温が上昇し、順調に生育したが、5月下旬に一時期気温が低くなり、その後急激に気温が上昇したときに、しおれ症状が多発した。また、5月下旬からチップバーンが多発し、6月下旬からは「茎折れ」も多くみられた。7月上旬の気温は平年並みだったが、中旬に入って低くなり、日照不足も続いて開花の速度が鈍くなり、ブラスチングも目立つようになった。7月下旬になると、気温も回復し開花が進んだ。
発蕾や開花の状況について、最も早い品種では6月15日に50%の株が発蕾し、7月2日に開花始期(10%の主茎頂花が開花)となり、7月7日に開花盛期(50%の主茎頂花が開花)に達した。最も遅い品種では7月11日に50%の株で発蕾となり、審査日には開花始期に至らなかった。また、チップバーンや枝折れの発生程度は品種間での差が認められた。
審査温室全景
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閉会および入賞品糧の検討
審査の終了後、中山審査長より福島県農業総合センター関係者への御礼と併せ「今回の出品品種は、淡い花色の品種が多く、またフリルやフリンジ系の花型を持つものも多く見られた。一方で、丸形のシンプルな花型で目を引く品種も見られ、ユーストマのトレンドの傾向に変化が感じられる審査会となった。」との講評が述べられ、閉会となった。
参加者の滞在時間を短縮するため、審査を終えた参加者にはそのまま解散して頂き、審査結果は後日、参加者および関係者に通知することとした。
集計された採点結果をもとに中山審査長と公的審査員ならびに事務局で検討会議を行い、下記の通り入賞結果を確定した。
公的関係者からは、厳しい気象条件においても花色の発色が良く、生理障害が少なかった点、また花弁が厚く硬さが十分にあり花持ちが期待される点などが入賞品種の評価点として挙げられた。
審査結果【ユーストマ(季咲き)】(100点満点)
順位 得点 等級 品種名 出品者 1 83.10 1等特 SM8-642 ㈱サカタのタネ 2 81.50 2等 SM8-381M ㈱サカタのタネ 3 80.10 2等 BU-615 タキイ種苗㈱ 4 79.20 3等 プランタン 福花園種苗㈱ 5 78.20 3等 17-199 福花園種苗㈱ 6 78.00 3等 F17-306 住化農業資材㈱ 1等特別賞「SM8-642」
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審査員内訳
官公審査員
・農研機構 野菜花き研究部門
・山形県庄内総合支庁産地研究室
・長野県野菜花き試験場
・郡山市園芸振興センター
・福馬県農業総合センター日種協
・花き栄養繁殖性植物部会員
・福島県支部会員