
令和2年2月7日(金)愛知県農業総合試験場東三河農業研究所(豊橋市飯村町高山)にて開催された。愛知県のキャベツ栽培は豊橋市や田原市など、温暖で日照の多い東三河地域を中心に冬春キャベツの大産地が形成されており、作付面積は5000haを越え全国1位となっている。県内担当者によれば1~2月の厳寒期に新鮮なキャベツを出荷できる産地は限られるため、愛知県への期待も大きくなっているとのことである。
審査会の開始にあたり、愛知県農業総合試験場東三河農業研究所を代表して杉浦英博・所長より開会挨拶があり、続いて日種協技術研究委員会を代表して榎本真也 ・副委員長(㈱サカタのタネ)より謝辞が述べられた。続いて、農研機構野菜花き研究部門野菜育種ゲノム研究領域アブラナ科ユニットの柿崎智博・上級研究員を審査長として打合せを行った。
続いて栽培を担当された森下俊哉・主任研究員より耕種概要の説明があった後、立毛100点・収穫物300点の計400点満点による審査を実施した。

会場となった愛知県東三河農業研究所

審査圃場全景
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耕種概要
栽培場所
愛知県農業総合試験場 東三河農業研究所Hほ場
土質
細粒質台地黄色土
前作
キャベツ
試供品種
31点
栽培規模
1区44株(4畝×11株)、2区制
栽植様式
畝間60cm、株間27cm、6,172株/10a
播種
8月14日 128穴セル成型トレイに播種(1粒播き)
8月14日~16日にスポットクーラーによる催芽処理を行い、防風ネット育苗とした。定植
9月11日
施肥
基肥
9月10日 BBグリーンワイド(20-5-9) 100kg/10a
追肥
11月6日 BBわかばの友(16-2-15) 50kg10a
12月25日 ダブルクイック(16-6-10) 30kg/10a
成分量【N:P2O5:K2O = 32.8:7.8:19.5】(kg/10a)薬剤散布
薬剤使用基準に基づき以下の薬剤による防除を実施した。
8月16日 プリンス粒剤 9月9日 プレバソンフロアブル5 9月10日 ネビリュウ 9月13日 フィールドスターP乳剤 9月26日 ディアナSC、トップジンM水和剤 10月7日 アファーム乳剤、クプロシールドフロアブル 10月16日 トルネードエースDF、カッパーシン水和剤 11月8日 グレーシア乳剤、カンタスドライフロアブル 12月9日 リーフガード顆粒水和剤、アフェットフロアブル 管理
10月8日に中耕を行った。
立毛審査の様子
試験場スタッフによる収穫作業
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生育期の気象状況・生育状況
生育期間中の気象状況について、生育期間を通じた平均気温は平年より1.9℃高く、特に9月と10月は2.2℃、1月は2.9℃高かった。10月の降水塁は台風とその後のまとまった降雨により606mmと平年より438mm多くなった。一方、9月は182mm、11月は56mm少なかった。生育期間を通じた日照時間は平年並みであったものの、10月は34時間、12月は24時間、1月は21時間、平年より少なかった。
生育状況については、播種時期は気温が高く、発芽不良が懸念されたため、スポットクーラーによる催芽処理を播種後2日間行った。発芽率は、78.5%とやや低い品種があったものの、31品種中27品種が90%以上と概ね良好であった。
大量発生したコオロギによる食害のため、定植直後に欠株が発生したため、9月25日に補植を行った。定植後1か月間は十分な降雨がなく初期生育は緩慢であった。10月12日には台風19号が接近したが、台風ネットを被覆したこともあり、深刻な影響は受けなかった。その後、10月中下旬は降水量が多く根傷みが発生したものの、気温が高めに推移したこともあり概ね順調な生育となった。
生育前半はシロイチモジヨトウの発生が多く、後半はコナガの発生がみられた。病害では、冬季の降雨が多く菌核病の発生が目立った。
結果発表および講評
審査終了後には、野菜研究室の金子良成主任研究員のご案内で、場内のミニトマト試験温室などの見学を行った。
その後、柿崎審査長より入賞品種の発表があり、続いて「今回、出品された種苗会社各社の育種への取り組みに敬意を表するとともに、厳しい気象条件の中で管理を担当された栽培ご担当者には御礼を申し上げる。栽培ご担当者に県内キャベツの生産動向を聞いたところ、厳寒期にみすみすしいキャベツを出荷できる産地として愛知県での作付面積が拡大する中において、収穫期間に融通の利く寒玉系の作付けにシフトしつつあるが、寒玉系は厳寒期に生育か停滞しやすいなどの問題があるとのこと。このことから、近年の冬季における厳冬や暖冬などといった気象変動に対して鈍感で、気象の影響を受けにくい品種の開発が必要と思われる。」との講評があった。
審査会の閉会にあたっては日種協愛知県支部を代表し て川西裕康・支部長(トヨタネ㈱より、栽培こ担当者や参加各社への御礼と併せ「今回の審査会がこれまでになく大規模な参加者数となり、また31品種と多くの出品を頂いたことから、冬場の寒玉系キャベツ産地として愛知県の重要度が増していることを実感するとともに、これからも種苗会社各社のさらなる育種開発に期待したい。」との言葉を以て終了した。
審査結果【キャベツ(夏まき冬どり)】(400点満点)
順位 立毛 収穫物 合計 等級 品種名 出品者 1 84.04 253.11 337.15 1等特 渡辺交配 IN-BY569 渡辺農事㈱ 2 82.07 253.11 335.18 2等 カイヤ交配 KV100 ㈱カイヤ採種場 3 80.41 244.22 324.63 2等 タキイ交配 No.3276 タキイ種苗㈱ 4 77.33 238.89 316.22 3等 カイヤ交配 かんなみ カネコ種苗㈱ 4 79.78 233.90 313.68 3等 野崎交配 NC-321 ㈱野崎採種場 4 78.15 233.84 311.99 3等 タキイ交配 TCA-540 タキイ種苗㈱ 4 78.63 233.16 311.79 3等 小林交配 KCA-330 小林種苗㈱ 4 73.44 237.17 310.61 3等 ノウリン交配 円楽 ㈱日本農林社 4 72.85 236.94 309.79 3等 冬美 みかど協和㈱ 収穫物審査の様子
トマト試験温室の様子
1等特別賞「IN-BY569」
審査員内訳
官公審査員
・農研機構野菜花き研究部門
・神奈川票農業技術センター
・兵庫県立農林水産技術総合センター
・愛知県農業総合試験場東三河農業研究所日種協
・野菜種子部会員
・愛知県支部会員